男性が悩みを抱える身体トラブルの一つに排尿に関わる問題があります。排尿トラブルには様々な種類がありますが、この記事では、排尿後にも爽快感を得られず、膀胱に違和感を憶える「残尿感」について解説します。
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残尿感の症状
排尿したにもかかわらず、まだ体内に尿が残っている感覚や、尿がすべて排出されていないような不快感が継続する症状が残尿感です。残尿感は物理的な残尿の有無に関わらず感じることがわかっており、体内に排出されなかった尿が残っていることもあれば、残っていないこともあります。
排尿のメカニズム
腎臓で作られた尿は、尿管を経由して膀胱に溜まります。膀胱に蓄えられる尿量は約300ミリリットル程度です。尿が溜まっている時の膀胱は緩んで広がり、尿の経路である尿道は縮むことで尿漏れを防いでいます。排尿時には尿道が広がり、膀胱は収縮することによって尿を体外に排出することができるようになっています。
残尿感はなぜ起こるのか
幼少期や青年期に比べ、加齢に伴い膀胱の伸縮性は落ちていきます。膀胱の筋肉が衰えることが原因であり、一般的な老化現象の一つです。膀胱を司る筋力の衰えに関連し、残尿感や排尿時間の長さなど様々な影響が認められることがあるでしょう。
排尿に多少の違和感を感じたとしても過剰に心配する必要はありませんが、正常時と比較して明らかな変化を実感する場合には、なんらかの病気が原因である可能性も否定できません。
残尿感を伴う病気
単なる老化現象としての残尿感は特別に心配する必要はありませんが、時には体の異変や病気のシグナルとなる場合もあります。
残尿感を伴う代表的な病気をご紹介します。
前立腺肥大症
男性特有の生殖器である前立腺が肥大し、膀胱や尿道を圧迫することで正常な排尿を妨げる症状です。
前立腺が肥大する原因は加齢に伴うホルモンバランスの変化と考えられていますが、まだはっきりとわかっていません。
前立腺肥大症は前立腺の疾患として罹患率の高い病気です。前立腺肥大症の発症後には、主に排尿後の違和感を感じることが多くなるため、残尿感を訴える方もいます。
前立腺炎
男性の体内にのみ存在する前立腺の周辺組織が炎症を起こす病気です。前立腺炎は細菌の感染によって痛みや排尿障害を引き起こす急性前立腺炎と、細菌感染及び非細菌感染によって発症し、軽度の症状が継続しやすい慢性前立腺炎の2種類に分類することができます。
どちらも残尿感や尿漏れなど共通する症状が認められ、症状が進行すると他の病気を併発する可能性もあります。
神経因性膀胱
末梢神経の疾患により膀胱や尿道の正常な働きが妨げられ、様々な排尿障害を引き起こす症状です。神経因性膀胱を発症すると、排尿統制が混乱し脳からの指令が上手く伝わらなくなり、脳と膀胱及び尿道の意思疎通機能に障害が起こります。
障害によって排尿反射に異常が起こり、残尿感や排尿の勢い不足など様々な症状を引き起こします。
膀胱炎
尿を蓄える役目を担う膀胱に炎症が起こる症状です。物理的な残尿が無いにもかかわらず残尿感を憶える特徴があります。体内の細菌が尿道から侵入することにより発症する可能性が高く、体の免疫力が低下している時に発症しやすい病気です。
男性よりも女性の罹患率が高い病気ですが、残尿感や頻尿を認める男性もあり、血尿などの症状が見られることがあります。
膀胱癌
膀胱に認められる悪性腫瘍です。女性に比べて男性の罹患率が高い病気であり、高齢者に多いことがわかっています。また、喫煙者の罹患リスクが高いことで知られ、代表的な原因と考えられています。
罹患早期から具体的な症状が出やすいとされ、代表的な症状には血尿があります。残尿感や頻尿、排尿時の痛みなど、膀胱炎などに似た症状を発症することもわかっています。
自律神経失調症
人間の健康な活動維持のために働く交感神経と副交感神経の均衡が、ストレスや乱れた生活習慣などが原因となって崩れた状態を表す表現です。
症状は多岐に及び個人差がありますが、残尿感や頻尿などの膀胱や前立腺に関わる症状が現れることもあります。ただし、体に具体的な症状が認められる場合でも、身体疾患が存在しないこともある点に留意が必要です。
治療について
残尿感を伴う病気は様々です。上述以外にも症状として残尿感が認められる病気は多く存在します。具体的な治療方法は罹患している病気や症状によって異なります。
前立腺肥大症や、前立腺炎及び膀胱炎などの場合には、抗生剤やその他の薬物療法を試みることが多いでしょう。症状が進行していたり、癌などのように腫瘍の切除が必要になる疾患では手術が必要になることもあります。
違和感を感じたら診察を
残尿感は肉体の老化によって引き起こされる反応であり、それ自体が病気に直結する症状というわけではありません。一方で、様々な病気の症状として残尿が発生することも事実です。
若い時期に比べて何らかの身体的不安を感じる場合には、専門の病院やクリニックを受診することをオススメします。