監修:成田 学史
1987年生まれ 北海道釧路市出身 |
性病はとてもデリケートな問題です。性病に感染して症状が現れても「性病のことで検査・治療するのが恥ずかしい」「家族に知られたくない」といった理由で、病院やクリニックを受診せず放置してしまう方も少なくありません。
ただ、性病は珍しい病気ではありません。もし自覚症状がある場合は自分自身やパートナーのためにも、必ず治療を受けて完治するようにしましょう。
では、性病の症状には一体どのようなものがあるのでしょうか?
今回は、性病で現れる主な症状についてご紹介します。
Contents
性病とは?
性病は、性行為やそれに類する行為を行うことで感染する病気の総称です。「性感染症」や「STD」とも呼ばれている病気です。
風邪などと同じように、体内に細菌やウイルスなどの病原体が侵入することで感染が起こり発症するメカニズムです。具体的には、病原体を含んだ体液が体の粘膜や皮膚に触れることで感染します。体液とは、主に精液や腟分泌液、血液のことです。これらの体液が性器や口などの粘膜に触れることで感染が起こります。口も粘膜であるため、口腔内が出血している場合のキスなども注意が必要です。
また、基本的に性病は空気感染は起こりません。性行為や類似行為によってのみ感染するということが、性病の大きな特徴でしょう。
ただ、性病の中にはタオルの共有などで感染してしまうことも。そういったケースの性病感染には注意が必要です。
こんな場合は特に注意!
不特定多数の人たちと性行為を行っている場合や、アナルセックスを行う場合は特に注意が必要です。
不特定多数の人と性行為を行うと、それだけ感染の機会が増えて危険です。性病に感染しても無症状の方もいるので、知らないうちに感染させられてしまう可能性もあるでしょう。
また、アナルセックスは出血した場合が特に危険といえます。もし血液に病原体である細菌やウイルスが潜んでいた場合、その血液に触れることで感染が起こります。
どちらの場合も、必ず正しい予防を行うことが大切です。
性病ごとの症状は?
感染した病原体によって性病も種類が異なり、その種類ごとに症状も違います。
ここからは、主な性病とその症状についてご紹介します。
梅毒
「梅毒トレポネーマ」と呼ばれる細菌によって発症します。梅毒に感染すると、主に皮膚や性器に赤い出来物が現れます。ひどい場合には、性器からうみが出ることもあるでしょう。
また、発熱をともなう場合もあります。
性器ヘルペス
性器ヘルペスに感染すると、性器のまわりに赤い出来物や、水ぶくれができます。まれに出来物だけではなく、神経痛が起こることもあります。予防でコンドームを付けていても、ゴムが被っていない部分の感染は防ぐことができません。
性器ヘルペスで気をつけたいのが、症状が軽度の場合です。軽度の場合は水ぶくれがひとつしか出来物ができないことも多く、感染に気づかないまま過ごす方もいらっしゃいます。
もしひとつでも水ぶくれがあり、直近で性行為を行った場合は注意が必要でしょう。
性器ヘルペスは予防がとても難しい病気です。病院やクリニックで検査を受けることをおすすめします。
クラミジア感染症
クラミジア感染症は、日本国内でもっとも感染率が高いといわれている性病です。また、感染しても自覚症状が現れない場合が多いといわれています。
感染すると、男性は排尿時に痛みをともないます。女性はおりものの増加や出血、子宮頸部の痛みが現れます。
無症状であっても感染を広げてしまうことも考えられるので、定期的な検査を受けるべきでしょう。
淋病
淋病は、淋菌という細菌が原因で発症する性病です。淋病は男性が感染すると、尿道炎と同じ症状が現れます。具体的には、排尿時の痛みです。
女性が淋病に感染して治療が遅れると、最悪の場合不妊の原因となることがあるので、女性は特に注意したい病気です。
淋病も無症状であることが多いので、定期的な検査を受けましょう。
尖圭コンジローマ
HPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれるウイルスに感染することで、発症する性病です。
尖圭コンジローマに感染すると、男女ともに性器にイボができます。男性の場合は主に亀頭や冠状溝の周辺、包皮の内側や陰嚢にイボができます。また、男女ともに性器ではなく肛門のまわりにイボができることも。
HPVは良性型と悪性型のウイルスがあり、感染するものはほとんどが良性型です。ただ、悪性型のHPVに感染すると、男性は陰茎がんを、女性は子宮頚がんを発症する確率が高くなるので注意が必要です。
トリコモナス感染症
トリコモナス原虫という病原体に感染することで発症します。男女ともに、性器のかゆみや痛みといった症状が現れます。
トリコモナス感染症は、性病の中でも気をつけたい病気です。なぜなら、この性病は感染経路がとても多く、性行為だけではなく共用のタオルなどからも感染し、発症するからです。またタオルだけではなく、共用のトイレや浴室から感染する場合も報告されています。つまり、性行為を行った本人だけではなく、性行為を行ったことがない幼児なども感染するリスクがある、とても危険な病気です。
もし検査などで感染がわかっている場合は、タオルの共用などは避けましょう。家族と同居している場合は、トイレや浴室の使用にも細心の注意が必要。リスクが高い性病なので、しっかりとした予防を行うことが大切です。
HIV・エイズ
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することで発症します。
HIVに感染すると、風邪と似たような症状が現れます。具体的には倦怠感や発熱、筋肉痛や関節痛といった症状です。体内にある免疫のために必要な細胞が破壊され、これらの症状が現れます。細胞の破壊が進み免疫力が低下すると、エイズが発症するのです。この段階まで進むと、激しい下痢や体重低下、息苦しさなどといった症状も現れます。
エイズは「死の病」とまでいわれたとても恐ろしい性病。とても恐ろしい病気ですが、現代では医学の進歩により、HIVに感染してもエイズを発症するまで症状が進むことはほとんどありません。生活の管理さえできれば、HIV感染者でも長生きができるようになりました。
ただ、そのためには生活をきちんと管理することが必要です。危険性が低くなったとはいっても、感染するととても危険な病気です。パートナーへの感染を防ぐためにも、しっかりと予防を行いましょう。万が一疑わしい症状がある場合は、早急な検査が必要です。
性病は無症状の場合もある?
性病は感染しても、必ず発症するというわけではありません。病原体は体内に残ったまま、いつも通り生活できることもあるのです。
ただ、発症しないからといって、安心できるわけでもありません。もし自分が病原体を持ちながら無症状で、パートナーは病原体を持っていない場合、感染させてしまうリスクがとても高いでしょう。自分は無症状でも、パートナーが発症することで初めて自分の感染が発覚する場合もあります。
無症状で不特定多数の人と性行為を行うのは危険
無症状でありながら、不特定多数の人たちと性行為を行う場合は特に危険です。なぜなら、無症状であることで自分の感染に気づかず、多くの人に性病を感染させてしまうリスクがあるからです。もしそのウイルスがHIVであった場合は、とても恐ろしい結果になります。
不特定多数の人たちと性行為を行っている場合は、必ず定期的に性病の検査を受けましょう。そうすることで自分の健康状態もわかり、相手にも性病を感染させるリスクが大幅に減ります。
性病かな?と思ったら、まずは検査を受けよう!
もし性病と思われる症状がある場合や、無症状でも感染が気になるという方は、性病の検査を受けましょう。検査は病院やクリニック、もしくは保健所で受けることができます。
病院、クリニックでの検査
男性の場合、全国の「泌尿器科」で性病の検査が受けられます。病院によっては「性病科」を設けているところもあり、性病科では必ず検査が受けられるでしょう。
性病の検査は、すでに症状が現れている場合は保険適用が可能です。しかし、まだ発症しておらず、心配だから検査をしたいという場合には、自由診療となる可能性があるので、検査前に病院やクリニックに確認を行いましょう。
病院やクリニックで検査を受けるメリットとしては、検査で陽性反応が出た場合、すぐにそのまま治療に移行できることです。保健所では陽性反応でも治療を行うことはできず、最終的には病院やクリニックを受診しなければいけません。また、検査の日にちは自分の都合に合わせて決めることができる点もメリットといえるでしょう。検査できる性病の種類に制限はなく、いろんな種類に検査を受けることができます。
保健所での検査
保健所では、各地方自治体が性病の検査を行っています。保健所で検査を受けられるメリットは、検査費用が基本的には無料であることです。
さらに、保健所では匿名で検査を受けることが可能です。病院やクリニックでは、たとえ自由診療であっても匿名で検査を受けることはできません。そのため、検査を受けることを他人に知られたくない方や、プライバシーを守りたい方は保健所での検査がおすすめといえます。
ただ、保健所では性病が発覚しても治療を受けられないので注意が必要です。また検査の日にちも限定されており、さらに通常はHIV、梅毒、淋菌、クラミジア感染症の4種類しか検査結果がわかりません。
性病の治療はどのように行うの?
性病の治療は、基本的に薬の服用で行います。
イボなどができた場合を除き、基本的に外科的な治療は行いません。病院での治療は痛いのではないかと心配されている方は、どうぞご安心ください。検査自体も痛みはともなわず、安心して受けることができます。
少しでも違和感があれば、すぐに検査・治療を受けましょう!
性病は無症状であることも多く、感染に気づきにくいかもしれません。大切なパートナーや家族を守るためにも、少しでも違和感があればすぐに検査を受けるようにしましょう。
また、不特定多数の人との性行為など、感染リスクが高いと思われる人は定期的に検査を受けることが大切です。
まずは適切な予防を行い、もしもの場合も必ず検査と治療を受けて、安心して過ごせるようにしましょう。